「私のなかの彼女」書評No.001

【すべての働く女性に読んでほしい物語】

なぜ彼は私の元を去っていったのか。
恋をしたゆえに傷つき、自覚もないまま相手をうらみ、歳月と、書くということを重ねて、傷つかずに事実を受け入れられるようになった女性の物語。

相手の言葉に傷つくのが恋愛だ。

「自分の時間を自分のために使うことしかできない女」と言われて傷つく。彼の言葉に怯える。彼は事実しか言っていない。その残酷さ。

日々を過ごしているが、今を生きていない。自分を守るために、捏造した過去に生きる主人公。「物理的にはずっと遠くにいった」彼が、まだ「すぐ近くに潜んでいる」と感じる。
けれど「妄想のなかで生きることと現実を暮らすことは矛盾しない」と言える冷静さも持ち合わせて。

主観だけが入ったものしか書けなくなり、仕事も減っていくなかで、大学時代の恩師と再会する。恩師は、物書きになる前に自分の才能を見つけてくれた。その後、主人公はやっと「今から」を考え始める。「今から」には彼を連れていかなくていい。

そこから主人公の人生は、重石がとれたように、世界へ開かれていく。
幾度かめの旅、アブ・シンベル、アスワン、ルクソールからカイロへ。そこで恩師と落ち合い、人々が日常を暮らす市街のレストランで食事をする。

主人公はいつも【旅】で新鮮な力を得て、人生の次のステップに進む。
そうだ、最初に「書いてみたい」と思ったのも、香港の九龍城を歩きまわったあとだった。

あなたは今、人生のどのステップにいますか?
今がとても辛くても、いつかあなたの人生を意味づけてくれる誰かがいる、そう思える物語です。

 

–40代 女性

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