「ねじまき片想い」書評No.001

【片想い探偵は、心のねじをまく】

お得な本である。

恋と仕事に頑張る働く女子のストーリーだと思って読み始めたら、それだけではなかった。

主人公の宝子は、おもちゃメーカーに勤める商品プランナー。
片想いの彼が次々と巻き込まれるトラブルを解決するため、
宝子は、ちょっとした探偵もどきの活躍を見せる。
日常の謎を解くコージーミステリの要素も楽しめる小説なのである。

恋愛部分の展開も、なんか普通と違う。なんか……浮ついたところがない。
章を重ねても、恋は一向に進展する気配をみせない。

それはなぜかと考えてみたら、この宝子、自己完結した頑固な女。片想いの彼からも
「いいですよね、宝子さんはいつも頑固っていうか、自分を曲げないっていうか……」
と言われてしまう。
褒められてるけど、恋に発展しそうにない。

でも、そんな宝子に元ルームメイトの玲奈は
「宝子、たった一人でくるくる回って人生を回転させていけるのはね、
意固地なわけでも、魅力がないわけでもなくて、心豊かに生きてるあかしなんだよ。」
という。

たしかに、宝子は落ち込んでも誰かの力で立ち直るのではなく、自分で自分の心にねじをまく。
豊かな自分の世界に遊び、そこから生み出したものを人に与えても、‘一ミリもすり減らない’。
そんな宝子の恋は実ったのか? それはご自身の目でお確かめください。


-40代 女性

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