「八月の六日間」書評No.001

【山歩きの贈り物】

40歳を目前にした主人公が、いろいろな季節に、山歩きをする物語。

「八月の六日間」というのは、つまり、八月に六日間山歩きをした記録、ということです。

タイトルになっている章の他に

「九月の五日間」「二月の三日間」「十月の五日間」「五月の三日間」があります。

私の心に残ったのは、山歩きの風景そのものではなく、

歩きながら主人公の心に浮かぶ過去の記憶と、

それに対する現在の主人公による定義付けでした。

高校時代のイベントで、お爺ちゃん教師から非礼ともいえる態度をとられ、

辛辣な言葉をかけられた記憶。

ただひとりで立ちあがり、抗議をしたとき、お爺ちゃん教師の目に浮かんだもの、

それを「愛ではなかったか」と思える大人になった主人公。

大人になると、

当時は嫌だと思えた事柄に、違う意味を見出せるようになります。

そしてそれは、山歩きのように

「たったひとりで」「自然に抱かれて」「ただ歩く」ときに、

特別に与えられるギフトのようなものなのではないかしら、と思いました。

ギフトを受け取りに、山へいってみませんか?

–40代 女性

 

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