【山歩きの贈り物】
40歳を目前にした主人公が、いろいろな季節に、山歩きをする物語。
「八月の六日間」というのは、つまり、八月に六日間山歩きをした記録、ということです。
タイトルになっている章の他に
「九月の五日間」「二月の三日間」「十月の五日間」「五月の三日間」があります。
私の心に残ったのは、山歩きの風景そのものではなく、
歩きながら主人公の心に浮かぶ過去の記憶と、
それに対する現在の主人公による定義付けでした。
高校時代のイベントで、お爺ちゃん教師から非礼ともいえる態度をとられ、
辛辣な言葉をかけられた記憶。
ただひとりで立ちあがり、抗議をしたとき、お爺ちゃん教師の目に浮かんだもの、
それを「愛ではなかったか」と思える大人になった主人公。
大人になると、
当時は嫌だと思えた事柄に、違う意味を見出せるようになります。
そしてそれは、山歩きのように
「たったひとりで」「自然に抱かれて」「ただ歩く」ときに、
特別に与えられるギフトのようなものなのではないかしら、と思いました。
ギフトを受け取りに、山へいってみませんか?
–40代 女性