「八月の六日間」書評No.002

半ば強引に誘われた山登りにハマった“働く女性”。

人間は単に年を重ねれば、若いころと違う見方ができるというものではない。

様々な経験の積み重ねがあってはじめて、過去を当時とは違った角度で

見つめ直すことができるようになるのだ。

山に登ることや、山での様々な出会いといった経験を重ねるうち、

主人公は「学生時代の嫌な思い出」や「別れた男性」といった

以前は思い出したくもなかった過去に、自分なりの決着をつけていく。。。

と、主人公のポジティブな成長を描いた作品のはずなのだが、

私には今一つ、ひっかかる部分がなかった。

仕事にしろ、山での描写にしろ、肝心な主人公の内面の変化にしろ、

やけにあっさりしている。小説として、もうワンパンチ足りない印象だ。

時々起こるアクシデントも、物語のアクセントになるほど機能していない。

せいぜい扱いづらい上司がいたくらいで、話が進むと順調に昇進している。

巻末に「比較的難易度の高いルート」だと注釈が書かれているにも関わらず、

どう考えても登山には不要な文庫本までリュックに詰め込んで単独で山に挑む。

おまけに山小屋ではレストランばりのごちそうをふるまわれ、

登山客も少ないのか部屋も広々使いたい放題だ。

いくら小説とは言え、そんなに順調に物事すすまないだろ?

と、素直じゃない読み方をしてしまう。きっと、私がひねくれているんだろうなぁ。

私のようなひねくれ者には、あまりお勧めできない作品です。

あ、そうだ、主人公が「山月記」好きなところだけ、記憶に残りました。

–30代男性

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