NISA:金融機関が直面する課題(前編)
■「NISA(ニーサ)」ってなに?
昨年から「NISA(ニーサ)」という単語がテレビや雑誌を賑わせています。
これは、個人投資家のための“新しい「少額投資非課税制度(税制優遇制度)」”の愛称です。
各金融機関がこぞってテレビCMを打ち、業界では大変な盛り上がり(口座獲得競争)となっています。
(国税庁の発表によると、2014年1月1日現在のNISAの口座開設数は475万件。)
NISAは、2013年末で廃止となった、上場株式等の配当金および売買益等に係る10%の
軽減税率(証券優遇税制)を補う措置と考えられます。
簡単に説明しますと、上場株式や株式投資信託の配当金および売買益等が
新規投資額で年間100万円まで非課税になる制度です。
より詳しくNISAについて知りたい方は、
日本証券業協会のホームページを参考にしてください。
日本証券業協会「NISAはじめてさん こちらです。」
http://www.jsda.or.jp/nisa/
■すぐに始められない?NISA
本格始動で注目の集まるNISAですが、
出鼻をくじかれるような問題がニュースで取り上げられていました。
「NISA稼働率が低迷、長い『待ち時間』に冷める投資熱」(2014.2.6 ロイター)
記事によると、金融機関にNISA口座の開設申込み手続きをしてから
口座が開かれるまでに実質6週間以上かかるケースがあるとのことです。
NISAには「個人投資家が一人につき1つの金融機関で1口座のみ開設可能」という条件があります。
そのため、各金融機関は口座開設申し込みを受けた後、
他の金融機関で口座開設がなされていないかを税務署に問い合せます。
この確認工程が必要なため、どうしても時間が掛かってしまうのです。
金融機関にとっても一人1口座の条件は、顧客の囲い込みができるため
メリットがあります。
ちなみに、現時点では一度口座を作ると4年間は他の銀行に乗り換えできないことになっています。
しかし、コストの面から見てみると、口座開設にかかる手間や、
NISAに対応するためのシステム開発コストや維持コストは決して安くありません。
NISA口座の年間上限100万円の投資から得られる手数料でカバーしきれるのでしょうか?
ほとんどの金融機関が現状の獲得口座数で採算割れとなるのではないかと予測しています。
ましてや、前述のニュースの通り、口座開設の申し込みをした後で長く待たされれば
投資家の熱は冷め、開設したものの売買を行わない休眠口座にもなりかねません。
申込みから口座開設までの待ち時間は短縮できないのか?
その対策については、次回でご紹介したいと思います。