第2回:企業様インタビュー前編

■音楽ソフト(※1)ショップご担当者様インタビュー<前編>

「オムニチャネル・リアルデータ」、
今回は「販売する側」の企業様にインタビューをさせていただきました。
実店舗とオンラインショップの位置付けなどについてうかがったので、
その内容を2回に分けてご紹介します。

インタビューさせていただいたのは、東京都内に本社のある、
実店舗とオンラインショップを両方運営されている企業の
営業部 通販センターのリーダー Yさんです。

インタビューの実施に際してご協力いただきましたことを、あらためてお礼申し上げます。

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 インタビュー前編
私:
 本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。
 今回は、“オムニチャネル”をテーマに、
 実店舗とオンラインショップの連携などについて、
 お話をうかがいたいと思っております。
 よろしくお願いいたします。

Yさん:
 こちらこそ、よろしくお願いいたします。

■オンラインでの「中古品」購入
私:
 早速ですが、私が御社の店舗/オンラインショップを利用した際に
 感じたことを中心にうかがいます。

 御社オンラインショップでは「店舗在庫検索サービス」や「中古品の注文」ができ、
 “オムニチャネル”の観点から利用者の利便性が向上していると思いますが、
 実現において、苦労されている点などを教えてください。

Yさん:
 まず「中古品」についてですが、同じタイトルの作品でも状態が違う、
 「一点もの」という意識を持っています。
 
 中古品は、商品の状態によってランク付けをしていますが、
 お客様の価値観によって状態の良し悪しが変わってくるので、
 すべてを網羅することが非常に難しいです。

私:
 例えば、Yさんの視点では盤質Aランクでも、私が見たらBランクだと思う、
 というようなことですか?

Yさん:
 そうですね。そういった意味で、状態の説明に苦労します。
 サイトの限られたスペース内で、文章量が多すぎてもいけないし、
 少なくてもお客様に伝わらない。
 
 店舗であれば、気になるお客様には、実際に盤面を確認していただくことが可能ですが、
 オンラインショップではそれができないので…。

 また、輸入盤になると、国によって新品の状態が違うことがあるんです。
 例えば南米など、プレスの状態が良くなくて、
 新品でも傷がある・盤質の良くないものがある。

 そうすると、新品として扱えないといったことも出てくるので、
 やはり盤質についての状態把握が苦労する点です。

私:
 確かに購入者にとっては、盤質は大事なポイントになりますね。

■店舗在庫検索サービス機能
Yさん:
 次に「店舗在庫検索サービス」ですが、ちょっとしたタイムラグで、
 お店で販売されてしまうことがあるんですね。

 オンラインから注文が入ると、在庫のある店舗に連絡が行くので、
 店舗のスタッフがその商品を手作業で確保するんですが、
 例えば接客中だったり買い取りの査定だったりで手が離せないと、
 間に合わないケースがあったりします。

 また、棚番といって、どの商品がどの棚に置かれているか
 という決め事があるんですが、例えばお客様が、
 「これ欲しいけど、今日はお金がないから、またにしよう。
 ここに置いてあると他のお客に買われちゃうから、こっちに移動しておこう」
 なんてことがあると、在庫検索では“在庫あり”なのに、
 実際の商品を店舗スタッフが見つけられなくて、
 結局オンラインのお客様をキャンセルせざるを得ない。

 そういった点が、苦労するところです。

私:
 「店舗在庫検索サービス」って、お話があったリアルタイム性という点でも
 実現が難しそうですが、利用者からすると画期的なシステムですよね。

Yさん:
 私どもは首都圏中心の店舗展開なので、
 関西圏のお客様への対応という意味合いもありますね。

■マニアのこだわり
Yさん:
 あとは、商品状態の話に戻りますが、
 例えばケースのホルダー(※2)の状態にこだわるお客様もいたりします(笑)。

私:
 ホルダーですか!?

Yさん:
 そうです。
 例えばプラケースにヒビなんかが入っていると、
 中古品の場合はケースをきれいなものに交換して販売したりするんですが、
 ホルダーの形状が新品販売当時のものであるか、
 というのにこだわる方もいらっしゃる。

 他にもケースに「コンパクトディスク」のロゴマークが押されているか、とか…。
 だから、傷があるから何でも交換してしまえ、ってことができないんですね。

私:
 そこまでこだわる方がいらっしゃるんですね!

Yさん:
 ええ(笑)。そういうコンディションを重視するマニアの方向けに、
 そういった状態のものは買い取り時の査定額を少し高く付けたりして、
 商品説明に加えたりしています。

 他には、バーコードとか…。
 国内盤だと、初回盤と通常盤でバーコードが違うんですが、
 輸入盤だとその辺がいい加減で、初回盤のデジパック(※3)と、
 2ndプレスのプラケース盤が同じバーコードだったりするんです。

 バーコードが同じだから、初回デジパック盤だろう、と思って商品説明を書いていると、
 購入したお客様から
 「デジパックだと思ったから買ったのに、プラケース盤だったので返品したい」
 といったケースもある。

 だから、状態をしっかりと目で確認する、というのも大事になってきますね。

私:
 なるほど、ちゃんと人が確認するひと手間が大事なんですね。

Yさん:
 はい。
 また、LPレコードだと、初回盤は保護シートが色つき・通常盤は色なし、
 なんていうのもありまして、これは外から見ただけでは判断がつかない。

 これは日本からの要望なのかもしれませんが、
 最近では、初回盤には外装に小さな丸いシールが貼ってあって、
 初回盤と判るようにしてくれるようになりました。

私:
 初回盤かどうか確認するのに開封してしまっては、新品として売れないですもんね。

Yさん:
 そうですね。だから、商品の状態の確認というのが大事です。

 特にLPレコードでは、既に商品をお持ちのお客様が、
 手持ちのものよりもさらに状態の良い品を求めていらっしゃることも多い。
 そういったお客様に商品状態をどう伝えていくか、ということもあります。

 まぁ、マニアの方の要望を取り込もうとすると、
 それだけいろいろなハードルが高くなる、というのが苦労する点ではありますね。

私:
 なるほど。わかりました。ありがとうございます。 

■ポイント制に対するお考え
私:
 それでは次の質問に移らせていただきます。

 多少私の要望も含んだ質問になるのですが、
 私の現住地近隣には他社様も含めてCDショップがないので、
 結果的にオンラインショップの利用がほとんどです。

 御社では、店頭ではクーポン券/割引券の配布を頻繁に行っておられますが、
 実店舗とオンラインショップ共通で利用できる、
 いわゆるポイント制などを導入するお考えはおありでしょうか。

Yさん:
 ポイント制度を導入する予定は、ないです。

 昔はスタンプカードをやっていたんですが、
 「割引」「特典」に加えて「ポイント」となると、
 いわゆる販促費用における負担が相当なものになってくるんです。

 お客様が保持しているポイントって、ある意味私どもの借金になる訳ですから、
 そういった諸々の経費を試算したうえで、スタンプカードをやめる決断をしました。

私:
 私も昔、御社のスタンプカードを持っていました。

Yさん:
 私どもでもWスタンプなどをやっていましたが、かなり苦労しました。
 他社さんで「ポイント何倍」みたいなキャンペーンをやられていますが、
 一社がやると別の会社さんも追随して同じことをする。
 結構な負担になっていると思いますよ。

 だから、どこか一社がやめたら、他もこぞってやめるかもしれませんね。

 スタンプカード時代を知らない若い社員で「ポイントやろうよ」という人もいますし、
 スタンプやっていた時期、それが販売数にある程度貢献していたことも事実です。

 ただ、現状、私どもとしては、
 「ポイントを付けなくても、定価でも買っていただける付加価値をつける」、
 「ポイントによる値引きの消耗戦には参加しない」、
 といったスタンスで取り組んでいます。

私:
 良くわかりました、ありがとうございます。

-----

インタビュー前編、いかがでしたでしょうか。
次回は後編、企業様のアピールポイントなどをうかがっています。

お楽しみに。

―――――――――脚注―――――――――
※1 音楽ソフト
 オーディオレコード(CD、レコード、カセットテープなど)と
 音楽ビデオ(DVD、Blu-ray、ビデオテープなど)の総称。

※2 ホルダー
 CDケースの、CDを支える爪の部分のこと。

※3 デジパック
 厚紙の台紙にプラスチック製のトレーを貼り付けたタイプの、
 CDパッケージング方式。
 外装の厚紙が傷みやすいが、初回盤などで利用されることが多く、
 プラケース盤よりも重宝がられる。

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