地下霊場でお遍路ご利益。ニコタマの名刹「玉川大師」
私が『朱印女子のパワースポットめぐり』をしていることを気にかけてくれている同僚が「ニコタマ(二子玉川)の寺院に、真っ暗な地下霊場があって、そこでお遍路さん巡りができるらしい」と教えてくれました。
調べてみると、世田谷区瀬田にある「玉眞院(ぎょくしんいん)」という寺院のようです。通称『玉川大師』。地下霊場には約300体の石仏があり、これらの石仏を拝むと四国八十八ヶ所・西国三十三ヶ所を巡ったのと同じご利益がある、んだとか!
お遍路さんというのは、弘法大師(空海)の 足跡をたどって四国にある八十八ヶ所の霊場を巡拝すること。白装束に菅笠(すげがさ)を被り、金剛杖を持っている”お遍路さんファッション”は見たことがあるかもしれませんね。
【お遍路さん (資料イラスト PIXTA)】
最近はファッションも自由、回り方(ex. 週末遍路)や順序も自由、と気軽になってきたようですが、それでも四国は遠い。そこまで行かずしてお遍路のご利益が得られるそうだし、おしゃれスポット:二子玉駅からも近い(徒歩約12分)ということなので、さっそく行って来ました。
(※四国八十八ヶ所に対し、西国三十三ヶ所とは、近畿2府4県と岐阜県に点在する33か所の観音信仰の霊場の総称)
●玉川大師 - 玉眞院(ぎょくしんいん)
・最寄り駅 – 東急線・二子玉川駅 徒歩約12分
改札を出て西口側:玉川通りを高島屋の前を通り過ぎながら緩やかに上って行きます。坂を上り切って「瀬田」の交差点まで行っちゃうと行きすぎ。途中で左の側道に降りる階段があるので、そこを降りましょう。
降りて細い道を進み、瀬田トンネルを背にして道なりに進むと、すぐに「玉川大師」の看板が見つかります。
境内にも沢山の仏像があります。
本堂内に入り、「地下霊場にお参りしたいのですが、、、」と申し出ると、まず本堂(地上)にある仏様たちにお参りしてから、説明を受けて地下道に向かう、とのこと。
「地下道は100メートルあり、その約1/3が真っ暗です。壁に右手をつけながら進んでください・・・」と始まり、
「途中、弘法大師様の仏具が祭ってあります。暗闇なので、壁に沿って手をおろして握ってください」「地下霊場では、自分の数え年と同じ番号の仏様の前でお祈りしてください」「大日如来さまの手から垂れている糸を自分の手にかけてお祈りしてください」「最後に満願成就のドラがありますので、1回だけ鳴らしてください」。。。
地下霊場の見どころ(?)を教えてくださいますが、たくさんありすぎて「覚えられない!」(笑)
灯明料として100円を払い、木製の階段を下り、いざ「地下霊場」へ。ここから先は撮影禁止ですので写真なし・実況中継のみでご容赦ください。
っていうか、真っ暗で写真撮っても何も映らないでしょう。目が慣れるとぼんやり何か見えてくる、というレベルではなくて、本当に真っ暗!です。
「触ってる壁になんかついていたら、、、」「踏み出した足先になんか触れたら、、、」想像し始めると「きゃぁぁぁ、、、」という気持ちになって、ひとりで歩くのはなかなか勇気がいりますよ。
恐怖を感じながらも「なるほど、これぐらい【非日常】【異界】的な体験をしないと、お遍路さんと同じご利益なんか得られるはずはない」と納得する私。勇気を出して“手探り暗闇の仏具握り”もクリア。
“300体の石仏エリア“には燈明が灯っているので、薄明りを頼りに自分の数え年と同じ番号がついた仏さまを探し出して祈願。
その後“真っ暗闇”と“薄暗がり”の繰り返しウォークで少し余裕が出てきた私は、“薄暗がり”エリアでゆっくりと霊場を見回すことができるようになりました。
そこには、弘法大師さまの立像があったり、天井に鳳凰のような彫刻があったり、最後のほうには、涅槃仏(横向きに寝そべったお釈迦さま)があったり、干支の仏像があったり、、、をじっくりお参りして、最後の「満願成就のドラ」をゴーンと鳴らして、地上へ戻る階段を昇りました。
●御朱印
●弘法大師(空海)さまと密教
本堂に掲げてある“縁起”を読みますと
「地下仏殿はご本尊弘法大師の大慈悲を具現する。」
「地下の参道は巨大な大日如来の胎内、胎蔵界マンダラをかたどっている。」
などと書いてあります。
弘法大師さま・マンダラ、なんか最近、聞いたばかりのような。。。先日行った京都の「東寺 」も弘法大師さまゆかりのお寺でした。「なんだか密教づいているな」と思い、せっかくなので、弘法大師さまとその宗派「真言宗」についてちょっと勉強してみました。
日本の仏教メジャー7宗派は、密教系(天台宗・真言宗)、浄土系(浄土宗・浄土真宗)、禅宗(臨済宗・曹洞宗)、日蓮系(日蓮宗)です。空海は真言宗の開祖で、同じ密教系でも天台宗とは、本尊や拠りどころとする経典の考え方が違います。
実家が真言宗でない人も、それどころか何宗かさえ知らなくても、「弘法大師(=空海)」の名前を聞いたことがあるひとは多いのではないでしょうか。
”大師”というのは、朝廷から高僧に贈られた諡号(しごう:死後に贈られる称号)です。他にも”大師”の名を贈られた僧はたくさんいるのですが、「弘法大師」だけ超・メジャーなのは、空海さんの活躍が目覚ましかったからです。
その活躍は仏教だけにとどまらず、庶民のための学校「綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)」を建てたり、出身地:讃岐国(香川県)の「満濃池(まんのういけ)」の決壊を防ぐ土木工事を指揮したり、医療や芸術(仏画)の分野でも後世に多くのものを残したと言われています。
そうそう「弘法も筆の誤り」というのも、弘法大師が“書の達人“だったことから来ていることわざなんですよ。
●参考文献●
『知識ゼロからのお寺と仏像入門シリーズ(瓜生 中/著)』(幻冬舎)
『弘法大師空海伝十三講 その生涯・思想の重要課題とエピソード(加藤 精一/著)』(大法輪閣)
『うちのお寺は真言宗 空海ってどんな人?生きたまま仏になれるとは?(わが家の宗教を知る会/著)』(双葉社)