ヤマトナデシコ”おもてなし”企画指南 塩津理代さん(後編)

【異なる文化圏での仕事】をテーマに、フランスにて日本人向けミニバス個人旅行会社を営む塩津理代(しおつみちよ)さんにお話をうかがっています。
前編はこちら。

 

-ずばり、海外で、とくに女性が働く苦労はありますか?

フランスでは女性が働くのは当たり前で、自己紹介ではまず職業を聞かれます。ですから専業主婦の時の方が、居心地は良くなかったです。主婦であることが嫌ではないけれど、働くことっていいなあとは思っていました。

苦労といえば、日本的感覚とフランス的感覚が違うこと。これは普段生活をする上でもしばしば感じることです。自分がフランスに住んでいて腹立つことが多い(笑)。フランスのサービスは悪いです。時間にルーズで遅くて待たされるのは当たり前、やると言ったことをやらない。日本に帰ると山手線が時間通り来ることに感動します!(笑)

MMTours

この感覚の違いが、良くも悪くも南ヨーロッパの文化なのだと思います。

ラテンで明るくて陽気、裏をかえせばいい加減。こちらもフランス人感覚になってしまえば良いかもしれないけれど、お仕事上、こっち(お客様)を向けば日本の顔、あっち(業者など)を向けばフランスの顔。例えば日本人のお客様とわたしは集合時間15分前に当然集まっているのに、フランスの業者は「契約どおり」とオンタイムで来る、などの違いです。

ここで感覚の板ばさみに合いますが、私は日本人でいたいと思いますし、やはりその感覚でいることが自分にとって心地良いことでもあります。会社もそれがスタート地点ですから。そのスタンスを持てていることが、フランスに居ながらにして続けたいと思うことですし、楽しい、と思うことです。

 

―海外(フランス)で仕事をする際のこだわりはありますか?

さきほどの「日本的感覚」を大切にすること。

お客様は100%日本人なので、日本的なサービスを心がけています。会社の特色もまさにそこで、「日本語ドライバーが日本語で日本的なサービスをします」というのが売りです。
MMTours

外国に来て緊張してるお客様に朝会って、「おはようございます!」って挨拶するだけですごくホッしてくださり、その途端に困っていることとかバーーーーッとおっしゃられたりすると、「あ、安心してくれてる」、と嬉しく思います。自分のアイデンティティをそのまま生かせているのは嬉しいですね。

それから、「限られた時間での海外旅行で、効率よく無駄なく個人ツアーができます」というのがもう一つの売りです。お客様はワイン好き・世界遺産好き・フランス好きのリピーターさんなどが多いです。

―どんな風に企画を立てますか?モチベーションは?

ツアーには既成コースもありますが、オーダーメイドもあります。お客様から場所ややりたいことの要望を聞き、効率を考えてコースを決めます。

帰国した際はクライアント(日本の旅行会社)をまわり、お話をすることでたくさんのヒントを得られます。例えば「南西部のバスクやトゥールーズ面白いですね」とか、「ホテルじゃなくてオーベルジュは?」とか、今お客様が興味を持たれている地名やワードを聞くと、それをうまくつなげてコースが出来ないかな?と、今後のやる気、モチベーションに繋がります。

ですから帰国中のいま、あたまの中の「企画ノート」にパズルのピースみたいなパーツがいっぱい散らばっているところです!フランスに帰ってこのピースを並べてみよう、とわくわくしています。

MMTours

いま作っている仕事だけでなく、今後のことを考えること、それが実現の有無にかかわらず、エネルギーの源になります。

 

―やめようと思ったことは?ストレス発散方法は?

やめられない状況ですね。2年前に大病したときは本当にどうしようかと、、。フランス人の夫では日本語しゃべれないし、、とか。

ストレス発散は、日本人の友人と日本語でしゃべることです。フランス人の友人には絶対分かってもらえない。フランスは第二の私の母国ではありますが、理解してくれるポイントが違うので、在仏日本人で日本茶輸入とか日本レストランを運営している友人と愚痴を言い合いストレス発散しています。カツ丼とか作ってもらうと気持ちが晴れます。

カツ丼

―最後に、仕事を通じて実現したいこととは?

ひとは向いていることがいろいろ違うと思いますが、自分はデスクワークをするより、アイデアを探しに歩いたり、お客さんと接する方が向いているようです。フットワークを軽くしていくことに繋がります。

そういえば、友人から「こわいもの知らず」と言われていました。最初にフランスに留学した時も、住む所も決めずに行ったり……。几帳面なことや細かいことは「ま、いいや」と思うことが多いです。そうでないと海外でやってらんないというのもありますが(笑)。

そうして動き続けることで、職業を聞かれたとき、「こういうことをやっています」と自信を持ってオリジナリティを語れるような、自分のワールドがある人になりたいと思います。

 

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