花粉と花粉症の科学(2017/02/25)①基調講演
関東はシーズン真っただ中ですね!「何の?」って、そう「花粉シーズン」※です。
(※スギ・ヒノキを想定)
「健康日本21推進フォーラム」※が2013年に実施した調査 によると、花粉症などのアレルギー性鼻炎により、仕事の”モチベーション”や”集中力”は、健康時の7割程度に低下してしまう、そうです。
※「健康日本21推進フォーラム」は、「健康日本21」(国民健康づくり運動)を産業界から支援する目的で1999年に設立され、健康日本21推進全国連絡協議会の一員として活動する団体です。
このような数字を出すまでもなく、花粉症の方は「この時期はユーウツ、、、」と感じていらっしゃるでしょうし、花粉症の同僚を持つ方は、その大変そうな様子を日々目にしておられるでしょう。
そんな「国民病」とも言われる花粉症について学ぶため、『花粉と花粉症の科学』に出かけてきました。こちらは「国立科学博物館」と「花粉問題対策事業者協議会(JAPOC)」共催で、2016年12月23日から2017年3月20日まで開催されている企画展です。
会期中に実施された、関連講演会の最終回「花粉症対策のこれまでを聴き、その未来を探る」をまず聴講します。
定員100名のところ会場は7割ほどの人の入り。テーマからして参加者のマスク着用率が高いだろうと思いきや、アレ?意外に少ない。「この中で花粉症の方は?」との質問に挙手したのは半数程度といったところ。
●基調講演「過去50年のスギ花粉症の歴史と、ここまでわかったスギ花粉の正体と将来の展望」
佐橋紀男氏 (元 東邦大学薬学部教授、特定非営利活動法人花粉情報協会 事務局長)
まずは、花粉飛散予測の権威である佐橋氏から「日本初の空中花粉カレンダー」を始め、1960年代からのさまざまな観測データを交えて、50年間の花粉研究について紹介して頂きました。
メモのセントラルイメージ(真ん中の図イラスト)で描いたように、花粉といえばギザギザのイメージですが、実はスギ花粉はギザギザしていません。
花粉、と一口に言っても、種類によって形が違うのを知っていましたか? 企画展では、その拡大模型を見ることができます。
トゲトゲしているのはブタクサの花粉。スギ花粉は、てっぺんがとんがった形をしています。丸くてブツブツがついているのはヒノキ花粉。あぁ、なんだか見ているだけで鼻がムズムズしてきます。
ブタクサは、刈り取りを奨励することで花粉のモトを駆除することが可能ですが、スギでは同じ対策ができません。現在は「少花粉種」が開発され、植え替えを開始していますが、定着するには100年かかる、とも言われています。
佐橋氏が、大学の学生達と実施したフィールド調査の様子もご紹介いただきました。
ある時は、千葉県・片貝の海岸で花粉を飛ばしてどこまで飛んだかを調べたり、またある時は、ヘリコプターに乗り込んで上空で窓を開けて空気を収集。その中に含まれる花粉数を計測したり…。
高層の調査場所は、まだまだあります。東京タワーの各所(タワービル屋上、 大展望台、特別展望台)や、新宿副都心の高層ビルのベランダなど。高所恐怖症では花粉調査もままならないかんじです。
このような調査結果を元にして、佐橋氏が描く将来像は以下の3つ。
●全国を網羅する「花粉情報システム」を作ること
●花粉の捕集器や計測器などの「ハード開発」を進めること
●上記ふたつをもって「花粉予測」の精度を向上・範囲を拡大させること
「花粉予想」については、現在「NPO花粉情報協会」で公開している前線情報(「スギ花粉飛散開始マップ」)だけでなく“後線”(いつ終わったか)も作りたい、というお話でした。
ご興味のある方は、「特定非営利活動法人 花粉情報協会」のサイト をチェックしてみましょう!
次回は「パネル討論」と「企画展」の内容についてレポートします。