芝浦工大 公開講座【脳にきく色 身体にきく色~思わず誰かに話したくなる、おもしろサイエンス!~】(20170708)
ニュートンの言葉に「光線には色が付いていない(The Rays are not colored.)」というのがあるそうです。目から入ってきた光を私たちの脳が「○○色」と識別するだけ、という意味。
「落ちるリンゴを見て、万有引力を発見」※ したニュートンですが、プリズムを使って太陽光を分解した実験でも有名。虹の色を決めたのも彼と言われています。
(※リンゴの逸話には確たる証拠がないとの説あり。リンゴの木は実際に庭にあったらしく、その木は今、プリンセス天功さんが持っている、と先日TVでご本人が言ってました。)
今回はそんな色にまつわる話を聞きに芝浦工大の公開講座※ に参加。
(※芝浦工業大学地域連携・生涯学習センターが主催する大人向けの講座。スキルアップや趣味・教養に役立つさまざまな講座が安価 - 1コマ約\1,000~1,500 - で提供されています)
講座と同名の本『脳にきく色 身体にきく色』(日本経済新聞出版社)という著書を持つ入倉隆 氏(芝浦工業大学工学部電気工学科教授)による講義です。座右の銘が「ゆっくり やさしく おだやかに」という入倉教授のゆったりと落ち着いた講義を聞くことができました。
●光と色
私たち人間が識別できる光は、波長が380~780nm(ナノメートル)の可視光と呼ばれているエリアだけ。380に近いエリアは、ニュートンの虹色で言うと紫っぽく見え、780に近いエリアは赤っぽく見えます。
紫より短い波長の光が「紫外線」、780より長い波長の光が「赤外線」と呼ばれるもの。昆虫には紫外線を見ることができる個体が多く、その力によって花の色やオス・メスの区別をしているそう。
たとえば、人間の目にはほとんど同じ色に見えるモンシロチョウのオスとメスですが、虫の目にはメスのほうが白っぽく(目立って)見えているそうです。これは、メスの羽の表面が紫外線を多く反射するため。
●色と感覚
講義は、人間が見える色に限定して、その影響についての解説へと続きます。
・同じ面積の黒と白の図形では黒のほうが小さく見える → 碁石は黒のほうがちょっと大きく作ってある
・黒い箱より白い箱のほうが軽く見える(感じる) → 宅配のダンボールを白くすることに応用
・寒色と暖色では体感温度が1~2℃も違う → エアコン温度設定に応用して省エネ
・青色と赤色で経過した時間の感じ方が違う(青:早い、赤:遅い) → 待合室は青色のソファ(長く待てる)、飲食店は暖色系のソファ(客の回転を早くする)
など「へーっ」というお話や、知っていると日常に役立ちそうな色の知識を次々に紹介してくださいました。
私の印象に残ったのは、【面積効果】と【色感度】の話。
【面積効果】というのは、面積が大きくなると、その色(色彩・明度・鮮やかさ)の特徴が強調される、というもの。
カタログで見て「可愛い」と選んだひよこ色(黄色)のカーテンを部屋に飾ってみたら「派手すぎて落ちつかない、、、」と思ったり、シックでおしゃれな色の壁紙を貼ったら「くすんで見える、、、」と残念に思ったりした経験はないでしょうか?
仕事では、ポスターやパンフレットを作成する際などに知っておくとよい知識かもしれません。デザイン段階と仕上がりの印象が違うということを知っていれば、大量印刷してから失敗に気づく、ということが避けられそう。
【色感度】は、色(光)に対する感度が、色の種類や見る人の年齢によって違う、というもの。特に青系統(青~紫。短い波長の色)は、年齢による見え方の差が大きいそうです。
これは背景色との組み合わせで増長され、「黒地に青文字」は高齢者には見えにくい組み合わせ。プレゼン資料などを作るとき、聴衆の年齢に配慮してみることは必要ですね。
配慮つながりでは、色覚異常(特定の色種もしくは複数の色種が識別できない)の方々にどう見えるか?ということも使える知識として知っておきたいですね。色覚異常の方々にも識別・区別できる色の選び方・組み合わせ方などを示した「カラーユニバーサルデザイン」という考え方があります。
記事冒頭のニュートンの言葉「色は人(それぞれ)の脳が決めている」、これは色だけでなく物事すべてにいえることかもしれません。
自分の伝えたいことが上手く伝わらないとき、どうしても相手に理解してもらえないとき、「もしかしたら相手には違う風に見えているのかな?」と考えてみることが必要です。
こんな気づきが得られる「公開講座」、一度参加してみてはいかがでしょうか。