Tiles 一枚の奥ゆき、幾千の煌めき(2016/1/6)
友人のSMS投稿で『Tiles 一枚の奥ゆき、幾千の煌めき』というタイル展の開催を知り、最終日に駆け込みで取材してきました。
INAXライブミュージアムの「世界のタイル博物館」に収蔵のタイルコレクションから選りすぐられた装飾タイルが展示されているとのこと。
開催場所は、渋谷Bunkamuraギャラリー。
本記事の目次
●Dot ~一片一色、幾千で描く~
入ってすぐ展示されていたのは「5500年前のグラフィックパターン」。
「クレイペグ」と呼ばれる円錐形の杭を壁に打ち込んで作られた幾何学模様。
こちらは、東郷青児の「裸婦」をモザイクタイルで再現したもの。10.5mm四方のタイル13,600枚を駆使して描かれています。
●Geometry ~整合する形、緻密な連鎖~
続いて、イスラーム建築などでよく見られる「カットワークモザイクタイル」の壁が現れます。
ラスター彩星型タイルと青釉十字型タイル(13~14世紀 イラン)
美しい青色が印象的です。「砂漠の民にとっては貴重な水の色であり、美しい空の色であることから、永遠の生命や天国への憧れの気持ちが込められていると考えられている※」そうです。
(※引用:「世界の装飾タイル」青幻舎)
●Motif ~文様の意図、増幅する魅惑~
イスラームからヨーロッパに渡ったタイルは、スペインやオランダでそれぞれの発展をとげ、ついにはイギリスにも到達しました。
(※写真:クリックで拡大します。)
オランダの「モチーフタイル」(17世紀以降)。
日常の生活や風物を題材とした絵柄が描かれています。
私が気に入ったのは「ヴィクトリアン・タイル」です。
1900年前後の建築ブームの中で作られたイギリスの装飾タイル:「ヴィクトリアン・タイル」。
多色使い、レリーフやチューブライニング※ による立体的でデコラティブなかんじが重厚で素敵。
※チューブライニング:図柄の輪郭を凸ラインで成形し、囲まれた凹部にさまざまな色釉を入れて焼いたタイル。
19世紀に入り、ゴシック復興で見直された「象嵌(ぞうがん)タイル」は耐久性を生かして床張りに使われました。
「象嵌(ぞうがん)」とは、表面にプリントする「転写タイル」とは違い、タイルの素地に絵柄に沿った切り込みを入れ、そこに着色した粘土を埋め込んで焼きます。そのため、表面がすり減っても絵柄が色褪せずに残ります。
INAXライブミュージアムの「世界のタイル博物館」では、ガラスケースに入った展示だそうですが、今回の展示会では、ガラス越しでなく直接タイルを眺めることができます。
そのため、レリーフタイルのラインの隆起や貫入(かんにゅう)※の様子、象嵌タイルの断面の様子などを間近で見られる貴重な体験をしました。
※貫入(かんにゅう):陶磁器の釉薬(うわぐすり)の部分にできる細かいひび模様。
コストカットのため、間に一色だけのタイルを挟んである。
●Metamorphose ~面から空間へ、タイルの可能性~
【movie】(♪音楽付です)
~タイルが組み換わると浮き上がってくる模様が見えますか?~
美術品のようなタイルを眺めるのもよいですが、やはりタイルは生活の空間で楽しんでこそ、と思います。
●今回展示されていたタイルは、愛知県常滑市にある土とやきものの複合ミュージアム:INAXライブミュージアムの「世界のタイル博物館」で見ることができます。