東京国際ブックフェア2016②(2016/09/23~2016/09/25)
『東京国際ブックフェア2016 』に行ってきました。
イベント概要は「東京国際ブックフェア2016① 」でご確認ください。
この記事では、ベストセラー作家:湊かなえさんと、雑誌:BRUTUS編集長 西田善太さんの講演聴講レポートをお届けします。
湊かなえさんの回『大ベストセラー「告白」はこうして生まれた』は、単独講演ではなく、担当の編集者や出版社の営業部長との対談形式。
湊さんご本人の希望で「本が出版され、世の中に出ていくまでのプロセスを知ってほしい」ということでこの形式になったそう。
”イヤミスの女王”と言われたりする湊さんですが、ご本人はとても可愛らしいイメージ。想像していたよりかなりのハイキーで話し始められました。
※イヤミス:読んで嫌な気分になるミステリー
この作品はもともと「聖職者」というタイトルでコンクールに応募されたもの。それを読んだ出版社の方(のちに担当編集となる)が賞に推し、さらに続編が執筆され、それらをまとめて単行本に仕立てるまでのプロセスを聞かせていただきました。
この対談を聞いていて、たしかに原稿を書いただけでは本にはならないんだよなぁ、と当たり前のことに気づきました。編集者が惚れ込んで企画を通さなければ世の中のひとに知られることもない。
営業は営業で、書店員さんと「湊かなえプロジェクト」を結成し、単行本発売前から異例のキャンペーンを敢行。関わったみなさんの「この作品を世に出して、多くの人に読んでもらおう!」という心意気を感じました。
発売後のある書店の光景「牛乳が好きな人は読まないでください」というポップ写真がスクリーンに映し出された時、聴衆(「告白」を読んだ人がほとんどでしょう)はウケてました。もちろん私も。
「なんで牛乳?」と思った方は、ぜひ『告白』を手に取ってみてください。
雑誌:BRUTUS編集長 西田善太さんの講演「編集者という遊び方(と仕事)」。
BRUTUSは“1号ひとつの特集だけ”という珍しい雑誌です(普通、雑誌には第2特集、第3特集がある)。
それだけそのテーマ(=特集)にギューっとフォーカスして、あらゆる方向からアプローチした記事が載っている中身の濃い雑誌です。
そういう作り方をする編集部の組織もちょっと変わっています。普通は編集長の下に副編集長がいて、その下に各デスクがいて、さらにその下に現場のメンバー、、、というピラミッド式です。でもBRUTUSでは、副編集長以下が全部現場でフラット、固定化した○○担当というのがないようなのです。
西田さんの編集方針は
「みんなで決めたことは正しいかもしれないが、面白くない」。
その精神で作っていると、大当たりもあれば失敗もあります。なんだかんだ言って売上がなきゃ存続もあやうい雑誌の世界。失敗号もあれど、1980年の創刊(西田さんが編集長になられたのは2007年12月)からずっと続いているのは、抜群に面白い号を発刊した実績があるからだろうと思います。
実際、講演の最中に見せていただいた過去の特集のテーマの掘り下げ方、力の入れ具合にはため息が出てしまいました。こんなに力を入れて作っているなんて、雑誌って値段と比較したら割に合わないのでは?と思ったほどです。
西田さんが考える「編集者ってどんな人?」というのはこんなひとです。
・何かが起こるとき「その場にいたい!」
・実物を「この目で見たい!」
・見たものを「誰かれかまわず話したい!」
・そしたら「ウケたい!」
「菜緒さん」編集長である私は、、、う~ん、全部当てはまりますね。これからも編集のお仕事、がんばって行こうと思います。