東京国際ブックフェア2016①(2016/09/23~2016/09/25)
『東京国際ブックフェア2016 』に行ってきました。
会期:2016年9月23日(金)〜25日(日) 10時〜18時
このイベントは今年で開催23回目。470の出版社が100万冊の本を展示・販売する展示会がビッグサイト西展示場で開催されるほか、人気作家による“無料”講演や出版という仕事について学べる“無料”セミナーなどがあります。
この記事では、1日目に行われた作家講演の聴講レポートをお届けします。
まずは林真理子さんの基調講演『本と生きる-その幸福な時間を貴方にも』。
この講演は大人気で立ち見もありうる、ということで優先的に入場できる「事前受付」の案内が来ていました。
想像以上の人気ぶりで、先着200名限定の「事前受付」はあっという間に終了。その権利は逃したものの、講演始1時間前から並んだ甲斐があって、前から2列目・演台の真横、ということで目の前でお姿を拝見できる席をゲット。
果たしてその通り、5メートルぐらいのところに林さんが登場されました。開口一番「ココ(東京ビックサイト)遠いのに、朝早くからありがとうございます」とねぎらいの言葉も忘れない林さん。落ち着いた上品な口調で真面目に話されていると思いきや、サラっとギャグも交えるので、会場はたびたび笑いに包まれます。
(中央のイラストは「anan」の林さん連載エッセイを読んでいた方にはおなじみの似顔絵を真似して描いてみました)
実は本屋の娘(お母様が『林書房』という書店をされていたそう)だという林さん。
本を取り巻く現在の状況として
・“住民サービスの充実”と称して、新刊書を20冊も30冊も入れてしまう図書館
・コーヒーなどを読みながら、買わないで本を読めるブックカフェの出現
・Amazonなどに代表される本のネット販売
を挙げて「本が売れなくて書店が1日2軒つぶれていくのが悲しい」「(図書館の貸し出し予約で)新書を234人待ちしないで、買って欲しい」という思いを吐露されていました。
その一方で、「そういう今どきのサービスと敵対したいわけじゃない。いがみ合っている場合じゃない」「本の未来を一緒に考えたい」とおっしゃり「作家もがんばります」と宣言されて基調講演を締めくくりました。
続いて午後からは、特別公演。
神戸女学院大学 名誉教授にして思想家、合気道の心得もあり凱風館の館長を務める内田樹さんの『だからいま、本を読む』。
内田さんからの問いかけは「本は商品なのか?」。
商品の“内田的”定義は「スペックやメリットなど、事前にその有用性がわかるもの」。その定義によると「本は商品ではない」そうです。
本とは 読んだ【後】に読者の「〇〇観(人生観、世界観、死生観など)」が変わるもの。
教育者でもある内田さんは、現在の“消費者がモノを手に入れる前に有用性を求めすぎる”風潮に警鐘を鳴らしておられました。結果が予想される読書に豊かさは存在しない、と。
豊かな読書体験とは、
・最初は断片的な情報しか与えられず
・読者は予測しながら読み進め
・次第に物語の中に引き込まれていく。
引き込まれる瞬間を内田さんは「新しい世界に”拉致”される」と表現していました。遠い時代の遠い国のことを、他者の体を借りて体験する。。。ここまでの話をうかがって、「読書ってアナログなVR(バーチャル・リアリティ)じゃないか」と思いました。
「子供の頃に本を読んでいると“共感力”が高まる」というお話もあり、それはやがて「知性的・宗教的成熟につながる」とのこと。
現実には非力な子供は特に「他者になりたい」欲求が強いそうです。物語にググッとのめり込めるのは、子供の特権かもしれないですね。実際に内田さんも「子供のころハマったのは『若草物語』。自分、男なのに!」という体験をシェアしてくださいました。
特別公演2つ目は、脳科学者:茂木健一郎さんの『人工知能に負けない「本の読み方」』。
「菜緒さん」(ソルクシーズグループ)も人工知能(AI)に注目していますので、過去に【IBM Watson Summit 2016】の展示会 やよっしーの講演 レポート記事を書いています。
タイトルだけ聞くと「流行りのワードと無理やりくっつけた感」(笑)がありますが、さて内容はいかに?
茂木さんは、ちょっと小走りで壇上に登場し、演台から離れてステージの上を歩きながら元気に話し始められました。冒頭は猪木とモハメド・アリの対決の話。なぜその話から?展開を予想させないところが“茂木流”です。
手持ちマイクでのびのびとアクション豊かに話された講演は、ご本人がUPされたYouTubeでみなさんお聞きになることができます。
(ラスト10分のQAコーナーでは私も質問してみました)
話を終えられた茂木さんは、弾むようにステップし、手を振って退場されました。
次回は3日目の様子をレポートします。お楽しみに。