花粉と花粉症の科学(2017/02/25)②パネル討論
「国立科学博物館」と「花粉問題対策事業者協議会(JAPOC)」共催企画展:『花粉と花粉症の科学』のレポートをお届けしています。
基調講演については「花粉と花粉症の科学(2017/02/25)①基調講演」の記事 をご覧ください。
この記事では、「パネル討論」とそこで出たお話に関連する企画展示を紹介します。
討論の<モデレータ>は、妹尾堅一郎氏。
・特定非営利活動法人産学連携推進機構 理事長
・一橋大学大学院商学研究科客員教授
・花粉問題対策事業者協議会(JAPOC)専門家理事)
妹尾氏は、『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』(ダイヤモンド社)をはじめとした著書があり、「ビジネス」と「知」の分野をまたいで活躍されています。
●パネル討論「花粉症対策の未来を探る」
<パネリスト>は、JAPOCが定義する花粉対策の「4つのフェーズ」からそれぞれの専門家が登場。
まず、それぞれの専門分野についてのプレゼンテーションがありました。
1.【生成】の段階 : 河原孝行 氏
・国立研究開発法人 森林総合研究所 研究ディレクター
日本の森林では花粉を生成できるまで成長した木が50%を超えており、これによって花粉症の被害が出ているとも言えます。
しかし河原氏は「森林の成長と人間の関係が、今、ちょうど悪いタイミングになってしまっただけ。スギたちが悪いわけでない。スギを嫌いにならないで欲しい」とおっしゃっていました。
花粉症対策としては、
① 伐採木の利用機会を増やす
② 花粉が出ない品種に植え替える
③ 生物農薬(カビ)を使って花粉生成を抑制する
に取り組んでおられるとのこと。
②③については、少花粉種への植え替えは実用段階に入っており、無花粉種・生物農薬(カビ)については研究段階。
カビ剤の散布により雄花が枯死し、花粉の飛散が抑えられているところ
2.【飛散】の段階 : 荒牧英治 氏
・奈良先端科学技術大学院 情報科学研究科 ソーシャル・コンピューティング研究室 特任准教授
「飛ぶ」のは花粉だけにあらず。「今日は朝から目がかゆいよ~(涙)」「鼻水がとまらなくてツライ。会社休みたい!」なんていう“つぶやき”も、FacebookやらTwitterやらで世の中に飛びまくっているのです。
ということで、荒牧氏は「ソーシャルセンサ」というキーワードで、花粉症対策にアプローチ。
荒牧氏はTwitter の“つぶやき”情報からインフルエンザ流行のピークを予測する手法の開発実績があり、これを花粉症対策にも適用できるのでは、とのお話でした。
すでに『つぶやきでみる花粉症話題度マップ 』を作成済み。都道府県ごとに「花粉症に関するつぶやき」を集計し、その多さを表示するシステムです。
荒牧氏がおっしゃった「情報薬(情報が薬と同じような役割を果たす)」という言葉が印象的でした。
3.【曝露】の段階 : 稲塚徹 氏
・ダイキン工業株式会社 常務専任役員
ダイキン、といえば“空調の専門家”ですが、そこからさらに一歩進んだ“空気の専門家”となるべく、空気清浄機の花粉対策にも取り組んでおられます。
花粉対策製品に関する認証マーク(JAPOCマーク)をご存じですか?
空気清浄機・マスク・メガネの3分野で、第三者試験機関による測定試験の結果、認証基準を満たした製品・用品に対して付与されるマークです。
もちろん、ダイキンには認証基準を満たした空気清浄機があります。
空気清浄機、マスクやメガネなど、認証された花粉対策製品は、JAPOCのサイト で確認できます。
4.【発症】の段階 :七條通孝 氏
・塩野義製薬株式会社 製品戦略部 企画・アレルギー免疫・皮膚疾患領域 部門長
七條氏によると、花粉症対策の目薬・経口薬・鼻スプレーともに、OTC化が進んでいるそうです。OTCとはOver The Counterの略。薬局・薬店・ドラッグストアなどで購入できる薬のことです。
以前は医療機関で処方していた薬で、OTC医薬品として販売が認められたものも出てきたとのこと。今年(2017年)1月から始まった「セルフメディケーション税制」活用の観点からも推奨されていました。
※セルフメディケーション税制:税制対象の市販薬を購入した際に、所得控除を受けられるようにしたもの。国の財政を圧迫している医療費の適正化が目的のひとつ。
ユニークなところでは「まつ毛が伸びる治療薬」なんていうものも紹介されていました。たしかに!まつ毛で花粉をブロックするのは有力な対策に思えます。
まとめとして、モデレータの妹尾氏が「花粉対策は合わせ技で!」と発言されました。
今回紹介された「生成」「飛散」「曝露」「発症」の各フェーズ(分野・業種)が連携すると同時に、個人の「花粉リテラシー」を高め、あらかじめ備えることが大切、とのラストメッセージを頂きました。
リテラシーとは情報を理解し、自己の目的に合わせて使いこなせる力、という意味。
企画展の入場者は、この日までに10万人を超え、予想をはるかに上回る盛況ぶりだそうです。私たちの「花粉リテラシー」は高まりつつあるのかもしれませんね。
「花粉リテラシー」をさらに高めたい方は、ぜひ企画展を覗いてみてください。
『花粉と花粉症の科学』
(「国立科学博物館」「花粉問題対策事業者協議会(JAPOC)」共催)
2017年3月20日まで 国立科学博物館(東京・上野公園) 日本館1階 企画展示室
花粉問題対策事業者協議会(JAPOC)では、「花粉症発症アンケート」を実施中です!今年は、アンケート回答収集数:1000を目標とされているとのこと。ご協力いただける方は、以下のページの説明をご覧ください(花粉症を発症されている方が対象です)。