芝浦工大 公開講座【出雲大社の建築~本殿の推定復元について~】(20170527)
「出雲大社っておおらか~」。。。公開講座、受講後の感想です。
【出雲のパワースポット】記事が人気だったり、自身の結婚式を出雲大社で挙げたりして、その存在を身近に感じている私なので、公開講座『出雲大社の建築~本殿の推定復元について~』を聴講してきました。
この公開講座は、芝浦工業大学地域連携・生涯学習センターが主催する大人向けの講座で、ほかにもスキルアップや趣味・教養に役立つさまざまな講座が安価(1コマ1,000~1,500円ぐらい)で提供されています。
で、今回は「出雲大社」調査発掘と推定復元がテーマ。2000年に行われた本殿付近の発掘調査に関わられた藤澤彰氏(芝浦工業大学建築学部教授)による講義です。長年の研究と、発掘で得られた知見を交えた本殿の推定復元について、お話を聞くことができました。
そこでうかがった「出雲大社のおおらかポイント」をご紹介します。「出雲大社」についてちょっと詳しくなって、友達に「ねぇ、知ってる?」って教えちゃいましょう♪
おおらかポイント(その1):「倒れたら遷宮(せんぐう)」。遷宮というのは、ご神体が祭られている本殿の場所を変えて建て直すこと。
「伊勢神宮」の【式年遷宮】が有名ですね。こちらはきっちり20年間隔で行われるのに対し、記録によると「出雲大社」は【倒れたら建て直し】という方式(?)。その間隔は、47年、31年、45年、、、等とバラバラ。
ちなみに2000年に発掘された本殿跡は、調査により鎌倉時代のものと推定。
おおらかポイント(その2):「どこでも本殿(ほんでん)」。
遷宮場所を現在の建物の隣に、きちんと確保している伊勢神宮方式に比べ、出雲大社の場合は、境内の空いている土地を見つけてそこに次の本殿を建てる、という方式(?)。
そのため本殿位置が時代によってまちまちなのです。それが2000年の発掘につながったといえます。というのは、現在、本殿がある場所の前にちょっとした地下設備を作ろうと思って掘ってたら、「ガツン!」と何かに当たってしまいました。
で、よくよく見たら、なんと「大社造(たいしゃづくり)」と呼ばれる神殿建築を構成するひとつの柱っぽい。で、発掘開始!となったそう。というわけで、最初に発見された宇豆柱(うずばしら)は、端っこをガツン!とやられて欠けています(ここらへんもおおらか)。
(資料写真 PIXTA)
「大社造」では、3本の木材を合わせて1つの柱にします。
そんな「出雲大社」ですから、発掘中もおおらかだったそうです。現場を高い囲いなどで隠すことなく、むしろよく見えるような階段上で、観光客が発掘現場を眺めている当時の写真を見せていただきました。
講座後半は「推定復元プロセス」のお話。
古代の「出雲大社」は、天にそびえる【巨大神殿】だった、という話を聞いたことがありますか?高い柱で支えられた本殿まで、ながーい階段が続いている模型を見たことがある方もいらっしゃるでしょう。
その模型案を作られた方のひとりが、講師の藤澤氏です。
復元模型を作るプロセスには、「古事記」や「日本書紀」などの古い文献の記述を比較したり、発掘調査で得られた科学的なデータをいくつも確認したり、という根気のいる作業が必要です。
エンジニア寄りのイメージがある建築の専門家である藤澤氏が、古事記をすらすら読まれる姿が新鮮でした。
データには信憑性がありますが、文献の情報はフィクションが含まれている可能性もあり、「どこまで信じて復元模型に反映するか」というのが悩みどころのようです。
その判断や解釈の違いにより、それぞれの専門家が作った、神殿の高さや階段の長さがさまざまな模型の写真を見せていただきました。これらの模型は「古代出雲歴史博物館」に展示されています。
「復元作業の精度なんてそんなもんです」と謙遜まじりに笑っておっしゃっていた藤澤氏の講義は、最初から最後までユーモアがあり、楽しい90分間でした。
社会人も参加できる大学の「公開講座」、一度参加してみてはいかがでしょうか。